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●やり手の助役さん 
  内容が内容だけに…かなりオブラートに包んで書くことにします。でも、勿論、真実の話です。これは、とある街の市長選挙でのお話です。彼はやり手の助役さんとして名を馳せていました。パフォーマンスも派手で、目立ちたがりのようでした。廻りの誰もが、「彼は、将来市長を狙っている!」と確信をしていました。また、本人も身近な人たちにはそう公言してるようでした。
  そんな折り、長年当選を重ねた現職市長が引退を決め、その噂が広がると同時に、彼は「私が後継者となる!」という風に出馬の意向を表明しました。と…同時に、当時の市議会野党の議員達が、彼を担ぐ表明をしました。しかし、現職市長はこの助役より、もう一人の助役こそが自分の後継にふさわしいと思っていました。このもう一人の助役は、まさに典型的な役人タイプで、「仕事師」という感じの、大人しいタイプでした。まさに、やり手の派手な彼とは、正反対のタイプでした。まあ…現職市長は、二人の助役をずっと見てきて、大人しい助役の方がベストだと思う何かがあったのでしょう。
  しかし、大半の市民の、一般的な情勢判断は、その派手な方の助役が勝つ!市長にはふさわしい!…と思っていたと思います。そして、選挙の告示まであとふた月も無い頃に、その派手な助役陣営の議員団のボスから、ボクに電話が入りました。『オウッ!ヤマグチ君!すまんけどなあ…ちと体あけて、いますぐ●●ホテルの●号室に来てくれるかー!!』ホテルの指定されたその●号室に着くと、そこにはその野党議員団の幹部と、この街の知る人ぞ知るフイクサーが待っていました。

●権力闘争
  結局、この時は、「正式に立候補を決めたら…ヤマグチ君頼む!!」ということで終わりました。この後、この助役より先に、もうひとりの大人しい方の助役が、立候補を表明し、「現職市長の後継者」という「錦の御旗」を掲げました。市民から見たら、派手な方の助役こそが「後継者」だと…殆どの人たちが思っていたはずでした。なんせ、目に見える「功績」は派手な方が上でしたからです。しかし、現職市長はその人を後継者に指名しなかったのです。何故か?真相は本人のみぞ知るでしょうが…後々、さもありなん…というこの「派手なタイプの助役」の市長としては、「根本的な欠陥アリ」がボクには理解できました。
  しかし、まあこの「派手な助役」も黙っていませんでした。後継指名されなかったけれども…まもなく、彼も「立候補表明」をしました。まさに、権力闘争です。市内部を二分する…血みどろの戦いになる可能性があります。泥仕合という感じの戦いになるかもしれません。ボクは「嫌な感じやな…」と正直、思っていました。しかし、間もなく、その「派手な助役」を支援する議員団のボスからお呼びがかかりました。
  そのボスとも長年の知己なので…断れません。また、フィクサーとも長年の知己なのです。告示日まで数週間しかありません。フル回転で企画に着手しました。運動員も沢山集まりました。選挙事務所も一等地に構え、完全選挙態勢で全スタッフもフル稼働でした。

●調停?
  告示日まで、あと一週間程という差し迫った時でした。この街の経済界のボスの「このままでは、市を二分する泥仕合になる!私が調停に入って、話し合いで決着させよう!どちらかに降りてもらうつもりだ!」という記事が新聞に大きく載りました。そして、その翌日、そのボスの呼びかけで、三者会談が持たれました。
  そして…その結果…「現職市長の後継者」という「錦の御旗」を持たない、我が陣営の「派手な助役」が降りるということになったのです。我が陣営のスタッフは「唖然呆然」でした。「オイオイ!!男がいったん決意して、戦うことを決め、こんなにスタッフも集まって…皆、戦いを初めてるのに…降りるのかい???」ボクも、この彼が「降りた」ことには、「エエエッーーー???」でした。ココは、どうせなら、「痛み分け」で、二人とも降りて…後継指名もくそもない、第三の候補で助役連合として、まとめるのが…政治家だと思います。経済界のボスも「中立の立場」での「調停」なら、彼からそういう「条件」を出すべきだと思いました。しかし、経済界のボスは、恐らく、現職市長からの「依頼」で動き出し、現職市長の「意向をくんで」調停に臨んだのだと思います。政治家なら、そういう裏を読み…そんな調停案を呑むべきでは無かった…と思いました。ボクもリキを入れてただけにガックリでした。勿論、スタッフも皆ガックリでした。

●エエッ?出るの? 
  終わったな…と思って、後かたづけして数日後、明後日が告示日という頃です。また、フィクサーから直接電話がありました。「オウっ!ヤマちゃん!!選挙や!急遽、出ることに決まった!!すぐにまた、始めてくれ!!頼む!!」このフイクサーには、ボクは逆らえません(苦笑)急転直下の、訳のワカラン…結末ですが…ココはもう「プロの仕事士」として、やるだけのことはやりきるしかありません。スタッフも再招集し、即臨戦態勢に入りました。
  普通なら、相当のドタバタ選挙ですが…そこはプロフェッショナル。何が最優先で、何を切り捨てで等…すべて任されてますから、即決です。選挙事務所開きから始まり…順調に選挙運動はスタートしました。
  結局、「助役対決」の選挙となったのです。しかし、まあ…ボクとしては、血みどろの戦いや、泥仕合にする気は全くありませんでした。「普通の選挙」として、一日一日、終わらせて行く…変な話、「消化試合」の気持ちでいました。体制的に、相手陣営は、「現職後継」「与党体制」、当方は「野党の一部」のみが裏で応援に付いている程度。しかも、告示前に必要な、事前運動は何も出来てないほどのモノ…情勢は厳し過ぎました。そんななかで、選挙中盤に思いがけぬ「事件」が起きたのです。


●エエッ?何を言い出す!!?? 
  候補者のスケジュールは、毎日夕方には、マスコミや候補者付きの秘書に送られます。選挙中盤のある日の夜、遊説が終了した候補者からボクに電話が入りました。「ヤマグチさん!いつもありがとうございます!実はご相談がありまして…今日、間もなくそちらへお伺いしてよろしいでしょうか?」
  間もなく、30分程して、ボクが陣取る「裏選挙対策本部」の隠れ事務所に、その候補者が現れました。何故か、婦人もついてきていました。その婦人は彼の奥さんでした。「(何事か?)」とボクは思いましたが…彼等を応接間に通しました。そして…口火を切ったのは、候補者ではなく…奥さんでした。
  「あのー、明日のスケジュールを拝見したのですが…この●●地区のモモタローという、予定なのですが…止めていただけないでしょうか?」ボクは「????????」でした。「エーーっと、なんのことでしょうか?」「あのー、主人にそこまでさせてまで市長にさせたくありません!!そんなこと、止めて下さい!」と奥さんが、涙を流してまで…言うのです。その間、候補者は無言でした。
  皆さんにも…よく判らないでしょう。説明します。その●●地区というのは、いわゆる「被差別部落」の地域なのです。「同和地区」とも言います。関西では、豊臣秀吉の政策で、各地に沢山存在します。この街にも、多々存在します。しかし、政治家にとって、そんなことは全く論外のことで…すべて、大切な有権者であり…差別に対して「闘っていく!」ことも、政治家の責務です。しかも、ボクが、候補者を歩かせようとした、この●●地区は、市内でも最大のその地域でした。市長候補としては、当然そういう地区を自分の足で歩き、自分の目で見てもらう…と考えて、数時間の予定で、歩き回って貰うという予定を組んだのでした。それを「止めて下さい!」と懇願したのです。それも候補者は無言で、奥さんが…シャシャリ出て…です。
  ボクは、自分の心の中の、柱がドドド…・ンと崩れていく音が聞こえました。「(なんじゃー!こいつ等!何様じゃ!?)」しかも、そういうことで、奥さんを押さえ切れない…まるで…幼稚園児のような、候補者。ボクは、この瞬間に「終わり」ました。切れる以前に…呆れて開いた口が、開いた心が塞がらない…もう…どうでもイイ。好きにせい…でした。

●ダブルスコアで敗戦
  この「事件」は選挙終了まで、ボクは誰にも言いませんでした。その日から、ボクは「こんな候補者は、市長にしてはいかん!」と思っていました。でも、任された「仕事」ですから、淡々と「職務」はこなし、投票日を迎えました。結果はダブルスコアで敗戦です。思えば…現職市長が彼を「後継者」にしなかったのは…このあたりかもしれません。市長は、間近で彼の人となりを見てますから…ボクらのように数週間の繋がりとは違いますから…こういうことが多々あったのかもしれません。

●教訓
  政治家は、バランス感覚が大事です。バランス感覚を養うには、すべての世界や価値観を知っていないと…バランスはとれません。何でも、知り。何でも興味を持ち、関心を持ち、突き詰めて知り…偏見も持たず…世間の価値観に惑わされず…よーく、よーく物事の本質も見極める「眼力」を磨き…というのを心がけて欲しいです。
  何か「事件」で、親が出てくる…奥さんが出てくる…は「論外」です(笑)