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●学生アルバイト 
  彼は、地元の名門国立大学の学生だった。四国の実家は貧しい農家だと彼は言っていた。石井はじめ代議士の有力後援者の紹介で選挙手伝いのアルバイトとして事務所に入ってきた。その有力後援者は、お米屋さんで、彼はそこで常時アルバイトをしていたが、「将来は、政治家になりたい!」という希望を米屋のオヤジに打ち明けたところ、「それなら、石井さんとこでアルバイトをしろ!紹介してやる!」ということで入って来た。見るからに生真面目そうな男で、すこし生意気な雰囲気も持っていた。まあ…そういう生意気に見える…というのは、人によっては感じ方も違うし、受け止め方も違うので…だが、まあ…彼と関わった人の95%はそう感じたのではないか・・と思う。しかし、そうとは言え「仕事」としての選挙運動は、真面目にコツコツという感じだったので、首にはならなかった。大学卒業という頃になり、「どうする?ウチに就職するか…?」と尋ねると、「はあ…まあ…そうしようかな…と」という返事だったので、当時ボクは筆頭秘書だったので、採用することで石井さんの了解も取り、珍しく新卒者の秘書採用となりました(縁故以外では彼が最初で最後でした)。
  ボクは、新人教育もしていたので、彼はボク付きの秘書になりました。手取足とりで、秘書業のことをレクチュアしました。そして、IQの高かった彼は、2年程で「選挙運動」のイロハを掌握しました。しかし、やはり秘書の間では、「チト生意気なヤツ」「心をなかなか開かんヤツ」という目で見られていました。
  まあ…彼の短所でもあり、また長所でもあったのは、「我関せず!!」という「馬耳東風」ぶりを徹底したことでした。人になんと言われようが…なんとも無い…という強さも持っていました。まあ…ややボクに似てると言えば…似てるかもなのですが…(苦笑)


●選挙初挑戦!
  彼の選挙出馬は、早すぎるくらいでした。確か、秘書経験4年程じゃなかったかと…思います。でも、選挙のイロハは充分に経験してるし…ボクに付いて「秘書見習い」もしてるので、選挙運動を手取足とりの必要はありませんでした。彼も、生意気なので(苦笑)…「はあ…自分でやれます!」ということを口走るヤツでした。ただ、イメージ戦略の各種制作物のデザインは、ボクからのはなむけに「無料奉仕」でやってあげました。まあ…それなりにイイのが出来たとは自負しています。
  しかし…結果は、次次点。定数10名の市会議員選挙で、12位の最下位でした。票数は3511票。最下位当選の人が5214票なので…かなりの差でした。次点候補が4345票なので、そことも離されていました。しかし…本人は、サバサバ…という感じ。まあ20代の若さですから…アッタリマエだったかもですが…(苦笑)
  選挙後、本人を呼んでヒアリングをしました。やるべきことは、まあ合格点でやっていました。ただ、この選挙は、阪神大震災の年に実施された統一地方選だったので…前にも別の候補のドキュメントでも書きましたが、有権者の「選挙に対する遊び心」的なモノは皆無となり…固定票、組織票を持つ候補が上位当選をする…という選挙だったので…まあ、運が悪かったのもあるような気がしました。


●再び挑戦!!
  まあ…彼の人生にとって、最初のつまずきは、長い目で見れば、良いことだったと…ボクは思いました。人間、成功の連続より、失敗を多々…のほうが教訓も多いかと…(苦笑)「また、挑戦するんか?」という、ボクの質問には「アッタリマエですよ!また挑戦しますよ!!」と…屈託なく応えました。そして、ボクは彼にアルバイト先を紹介しました。次期総選挙に向けてのある代議士の事務所でした。まあ…また修行の始まり…ということですな。
  一定時期が経過し、その代議士事務所の筆頭秘書に尋ねました。「どや?●●君、皆と上手くやってるか?」その秘書の答えはこうでした「ううん…まあ…ちょっと、彼は変わってますな…協調性が無いというか…ちよっと生意気に写ってるというか…仕事はよく出来るのですが…まあ…事務所的には、よく役立つ子なんですが…(苦笑)」やはり…似たような評価でした(苦笑)
  それから数年経ち、再び彼が出馬する統一地方選が間近に迫って来ました。彼は、ボクを訪ねてきました。「そうか、またやるか!どや、一人でやれるか?」「はあ…大丈夫です!今回は、デザインとかも、こっちでします!!」「そうか、まあ…しっかりやりや!!」
  そして…結果。前回より少し票は増やしたものの…3899票で次次次点。定数10名で13番目という結果。最下位当選が6040票。次点が5193票、次次点が4623票。そして彼でした。
  ボクは、コレはなんか、致命的な原因があるな…と探求しました。選挙運動のやり方は、彼は間違いなく熟知しています。でも…この結末は、なんなんか…ボクはプロとして非常に興味がありました。
  彼が2度立候補した選挙区は、ボクが石井はじめ秘書時代に15年間担当した所です。そこを彼は約5年近く、ボクの「お付き」として、活躍しました。ボクは、彼が落選後、その選挙区の有力者のところへお邪魔し…雑談を兼ねて…尋ねました。「あの…●●君は、どうでした?ココにも来ましたか?お願いに…」「ああ…来たよ!でもなあ…あの子、生意気やねん!私がな、●●●なんかしたら?どう?効果あるんちゃう?…って、まあ、意見を言ったら…そんなこと、よう判ってます!ちゅうて返事するねんでー!あんな生意気な子に入れる気は無いわー!」あああ…でした。一時が万事です。恐らく。どこでも、誰にでも、同じような「雰囲気」を「顔」や「ボデイ」から醸し出して…運動をしてたのでしょう。
  ボクが以前、選挙運動のヒアリングをしたとき、たとえば、戸別訪問軒数なんかは、充分に合格点の数字でしたが…それは、「数」の話で…そういう訪問なら…かえって…マイナスを増やすばかりですな。
  ボクは、コレまでのクライアントにも、ココまでの指導はしません。低姿勢、検挙な姿勢等は、アッタリマエ中のアッタリマエだからです。そんなことは、選挙に出るものの…先ず、一番のアッタリマエのことです。落選後、彼はしばらくボクのところに顔を出しませんでした。


●数年経ち…
  長らく音沙汰無しだった彼から、突然電話がありました。「今からお伺いしてイイでしょうか!?」まもなく、ボクの制作スタジオに現れた彼は、顔中髭だらけ…まさに、仙人のような風貌。しかし、若いので、真っ黒な髭のため…なんか縄文人のような感じでした。彼は、故郷の四国へ帰り、百姓をしている…と言いました。実家の農業を手伝っているということでした。
  「それで、ええんか?もう…政治の道は諦めたんか?」そう質問すると…「まあ…」なんとも答えにならない…声にならない声でした。ボクは、彼に、ボクが探求した、彼の落選の原因を話しました。彼は「はあ…そうですか…生意気ですかねー…」と…他人事のように返事しました。
  しかし…まあ、彼のような、ある意味「青雲の志」を抱いた…若者をこのまま野においては…惜しいです。以前、彼が、ボクに語った「ボクは、平等な社会を作りたいんです!」という…熱い想いは、大切なことだと思っていました。「どや!以前、手伝った、あの代議士ところへ、秘書で就職せんか?もう一度、全く違う選挙区で、また挑戦する気持ちを持ったらどうや?あの選挙区なら、君が過去2回の選挙で獲った3000票もあれば、上位当選やで!
  しばらく、考えて…みてはどうや?君がその気になったら、君を使ってもらうでー!」
  それから、数ヶ月して、彼が再び訪ねて来ました。あの髭を綺麗に剃り落としてです。
  「ヤマグチさん!●●代議士ところへ行かせて下さい!一から、心入れ換えて、挑戦します!是非、繋いで下さい!」「よっしゃ!判った!!」となりました。


●雪辱を果たす!
  まもなく、彼を代議士に紹介し…秘書として採用してもらいました。選挙区は大阪です。もう、彼にとっては、ゼロからのスタートです。おそらく、本気で、今度はやる気になったことでしょう。統一地方選ですから、次期は、前半と後半の違いで、同じ年度にあります。ここから、また、3年程、彼の事前運動が地元代議士秘書としてスタートしました。勿論、代議士には、その由は了解済みです。
  数ヶ月して、ボクは筆頭秘書にまた尋ねました。「どや?●●君、だいぶ以前とは変わったか?謙虚になってるか?(苦笑)」秘書は、「まあ…まあ…少しは変わったかな…(苦笑)でも、相変わらず…協調性はありませんねえ…そやけど、選挙のことは詳しいから助かってます!!」なかなか「性根」というのは変わりませんなあ…(笑)
  そして…統一選が始まりました。彼は、この代議士の地元の市会議員選挙に、当初の計画通りに立候補しました。この地元では、この代議士派の候補者はそれなりにいて…まあ、同族争いにもなる…という熾烈な戦いもあるのですが…この代議士は、こういうところが腹が据わっています。
  結果は、定数32名の選挙に、36名立候補し、彼は3718票を獲得し…2位当選でした。有権者数は、彼が2回落選した神戸の選挙区とほぼ同じ規模で…やはり…同じような運動で彼が獲得したのは3000票代だったちゅうのが…可笑しくなりましたが…ここでは、2位だったのです。
  その後、彼は連続上位当選を重ねています。


●教訓 
  有権者から頂く、貴重な意見は、たとえそれが「たいした内容」でなくても…有り難く、厚く御礼すること…間違っても「そんなこと承知!!」という顔とか、態度をしないように。
  他人が見て、生意気に見える顔、態度は決して、プラス要因にはならない。コレは、選挙にかぎらず…どの社会でも同じかな…それと…彼が、2度落選し…失意のどん底で田舎に帰り…だったが…こういう展開になるとは、思いもかけず…ただ、以前のお世話になったことのお礼が言いたくて、育てた「野菜」を山ほど持って来たときに…大阪の代議士秘書の話が出て…そして、それを熟慮のうえ、受けて…現在があります。人との繋がりを「大切」にすることです。